「言語の壁を乗り越え、日本の優れた商品を世界へ」ーチャプターエイトCEO高野氏インタビュー

WRITER : 平野紗希

  小売業界トレンド

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日本政府観光局が2016年1月19日に発表した調査によると、2015年の訪日外客数は、前年比47.1%増の1,973万7,400人で、3年連続で過去最高を更新したという。訪日ビザの要件緩和や円安などを受けて、中国などアジアを中心に訪日ブームが続き、年間2,000万人の政府目標の達成が目前に近づいている。

また、訪日外国人による消費額は前年比71%増の3兆4,771億円で過去最高を記録した。

このようなインバウンド需要増加を背景に、近年小売業界やサービス業界において、テクノロジーを活用したインバウンド顧客への”おもてなし”に注目が集まっている。

▼参照

日本政府観光局

訪日外国人へ日本の商品の購買を促すおもてなしアプリ「LOOK」

LOOK

株式会社チャプターエイト(以下チャプターエイト)の提供するアプリ「LOOK」は、バーコード(統一規格JANコード)をスマートフォンからスキャンすることで、日本の商品情報を英語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語、タイ語、インドネシア語、ベトナム語で閲覧可能にしたサービスだ。

また同社が運営する日本の商品を海外から買えるサイト「Jselection」掲載商品であれば、対象国(※1)のユーザーはスキャンした商品をアプリから直接購入することも可能だ。

「LOOK」によって、今まで商品やサービスの情報が言語の壁により理解できず、購買に至らなかった人々へ、商品購入の促進が可能になる。つまり、日本の商品やサービスを、訪日観光客を起点に世界の人々へアピールすることができるのである。

今回は、「LOOK」を提供する株式会社チャプターエイト 代表取締役社長 高野勇斗氏(以下、高野氏)にお話をお伺いした。高野氏は、2011年に株式会社アドウェイズ インドネシアを立ち上げ、2014年9月に退任するまで、その中心となって活躍されてきた方である。

高野氏は、なぜアドウェイズを離れ、インバウンド市場でのビジネスに挑んだのか。「LOOK」提供の背景とともに、「LOOK」が描く日本の未来、高野氏の考える小売業界の向かう先について語っていただいた。

▼参照

リクルートライフスタイル

(※1 対象国は中国、タイ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、フィリピンで、言語は英語、中国語、タイ語、インドネシア語をカバー。カスタマーサポートや通貨表示も各国のものに対応している。)

サービス開発はたったの4時間?新サービス誕生5つのきっかけ

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ーインドネシアから帰国し、まもなく企業した高野氏。なぜインバウンド向けおもてなしサービス「LOOK」を作ろうと思ったのでしょうか。

「LOOK」をつくったきっかけは5つあります。

1つ目は、私がインドネシア駐在中、後々親しい友人となるある男と出会ったことです。

彼は当時、商品のバーコードを読み取ると最安値がわかるというサービスを運営していて、バーコードから商品情報がわかるというのはすごい!と、とても驚きました。

2つ目は、前職でインドネシア人スタッフを日本に連れてきたとき、宗教の違いから食べられるものがわからない、お祈り場所がないという相談を受けたことです。その時、日本にはない宗教や文化の違いを解決するサービスがあればいいなと考えました。

3つ目は、2014年、日本のある会社がインドネシアに輸出したお菓子の中に、豚のエキスが入っていて、大問題になったことです。商品ラベルに豚エキス使用の記載はあったのですが、日本語で書かれていたために、そのまま店頭に並んでしまい、豚を食べることのできないムスリムの方が気づきソーシャルメディアで拡散しニュースになる事態となりました。その時に、言語の違いから、商品情報がわからないことが国家間での問題にもなるのだなと知りました。

4つ目は、8年ぶりに東京にもどって縁あって住み始めた原宿の街が、以前の女子高生や修学旅行生で溢れていた姿から、中国人や台湾人など訪日外国人の集まる街へ変化していることに驚いたことです。そこで訪日外国人がドラッグストアでスマホで写真を撮り、確認のために自国の人に送り、続けてチャットで商品説明する姿をよく見かけ、画像だけではなく商品の情報も同時に送ることができたらいいのではないか、と思いました。

5つ目は、LOOKのサービスを始める前に行っていた、海外から注文が入ったら日本の商品を代理購入して配送するという越境EC ”Jselection”を訪日観光客に認知させられる、サービスやツールを作ることはできないか、と考えていたことです。

このような背景があって、バーコードを読み取ると母国語で商品情報を知ること、日本の商品を海外からも買うことのできるサービスを思いつきました。

その後すぐに社内に提案したところ、うちのエンジニアがたったの4時間でサービスの原型を作り上げてしまったんです(笑)

ーサービスを4時間で作り上げてしまったのはすごいですね。「LOOK」には具体的にどのようなアイデアやテクノロジーが用いられているのでしょうか。

日本のJANコード(バーコード)は、とても優れていて、ネットで買おうが、リアル店舗で買おうが、メーカーから直接買おうが、1つのバーコードに1つの商品をひも付けられているので読み取れる商品は全て同じです。そこに着目し、JANコードをもとに画像と商品情報をネット上から取得しているのです。

そのため、ネット環境下に商品が掲載されている限り、情報を引っ張ってくることができます。

また、リクルートライフスタイル社が運営しているポンパレモール掲載商品でしたら、アプリ内で購入も可能です。現在3,000万点ぐらいの商品情報をカバーしています。

ーなぜ各国の言語で表示可能なのですか?

商品情報はネット上の日本商品の日本語または英語の情報を自動翻訳しています。

ちなみにこれはエンジニアから言うなと言われているのですが、翻訳はGoogle翻訳ではなくマイクロソフトのBing翻訳を利用しています。

ーこれは書いてもいいのでしょうか?

あ、いいですよ(笑)

開発費用ゼロ!「LOOK」リリースまでの苦労秘話とは

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ー実用化にあたりどのようなことに苦労しましたか。またそれ克服するためにどのような行動をされたのでしょうか。

実は今日初めて言うのですが、このアプリは開発費用がゼロなんですよ(笑)

エンジニアの方々に協力してもらうのには苦労しましたね。結局、我々のようなスタートアップは、お金を対価にするのではなくて、今までにない心踊るサービスを共に作ろうと周りを説得することで、挑戦心に火をつけなければならないと思います。まあまあ僕の周りにいたエンジニアやデザイナーがたまたまめちゃめちゃ良い人だったということだと思いますが。

ー収益化はどのようにされているのでしょうか。

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利用者にはアプリDL後、アンケートに答えてもらい、国籍、性別、年齢、訪問都市、訪日の目的といったデータを取得しています。これらのデータとスキャンした商品情報や位置情報、日時を紐付けて一元管理し、訪日外国人に商品を販売したいメーカーや小売店、地方自治体の方々にご提供させていただいております。またメーカーや小売店には商品紹介ページの編集機能やクーポン機能、類似商品やデータ検索機能を管理画面を通じて提供します。

ー今後付加サービスとしてお考えになっているアイデアはあるのですか。

はい。私の中では今後加えていきたい拡張機能があと99個ぐらいあります(笑)最初は5個ぐらいから実用化できればとおもっています。

例えば「こちらの商品をスキャンした人は、こちらの商品にも興味を持っています」といったレコメンド機能です。(現在追加済み)またスキャンしたデータから「国別の人気商品ランキング」や「言語別の商品のレビュー」を見る機能などがあります。

ー最初のアンケート情報、位置情報、商品情報の3つが結びつくイメージですね

はい。その通りです。今後はレコメンデーション機能以外にも、マップ機能をつけて、商品をスキャンした場所の近くにある飲食店にも誘導して行きたいと思っています。「爆買いしたら、爆食いしたくなる」といった感じです(笑)ただ、多くの観光客や留学生に聞き取り調査したのですが、ただレストランの場所を表示するとかメニューを翻訳するなどそういうことでは誰にも利用されないことがわかりました。

「LOOK」を通じて訪日外国人と日本人の間に生まれる新しい購買体験

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ー高野さんは「LOOK」をどのような方々に利用してもらいたいと考えていらっしゃいますか。

このサービスを利用していただきたいのは訪日外国人と日本人です。

我々が海外に個人で旅行をするとき、基本的には、行く、買う、泊まる、食べる、遊ぶといった行動がありますが、「買う」という部分は現地で決め、現地で決済することが多いですよね。そういったシーンで「LOOK」を利用してもらいたいと考えています。先ほどお話した「爆買いしたら、爆食いしたくなる」という流れにもつなげていきたいです。

実際に、団体ビザで日本に来る中国人の割合はビザの契約数に対して減ってきているといいます。それはつまり、空港についてバスに乗って移動し、決まったルートを行くといった旅行スタイルではなく、飛行機とホテルだけ事前予約し、日本に来てから何を買って、何を食べるか決めるといった方々が増えていくということです。

ー今後個人旅行客の増加によって、行動が変化していくのですね。

免税店を中心に人が集まっていたのが、個人商店やコンビニにも人が流れていくようになります。基本的には訪日外国人に寄り添いながら、地方を旅行する際の購入の手助けとなるようなことをしたいです。そこで、日本人が訪日外国人のおもてなしとして、「LOOK」を使用して欲しいと考えています。

例えば、外国語での接客が難しい日本人のアルバイトやパートの方々が働くコンビニやスーパー、外国人の店員がいない地方のお店で、外国人へ商品の説明をする際に、「LOOK」を使用して欲しいと思っています。

「LOOK」を世界中の人々へ!高野氏の挑戦とその先にある未来像とはー

ー世界中から日本に集まる外国人に「LOOK」のユーザーになってもらうために、現在どのようなアイデアをお持ちでしょうか。

広告を出してもいいと思うのですが、一番いいと思うのが成田・羽田空港、関空とかで訪日観光客が出てくるのを待ち伏せておいて、入国した人全員にビラ撒きをするのが早いのではないかと思ってます(笑)

警備員に注意されても5回ぐらいなら許してもらえると勝手に思い込んでいます。最初はゲート前、次はロビー、最後はバス停や電車の改札前、その後電車のホームといった感じで、徐々に空港から遠ざかりながら。この徐々に後ずさりしながらもそれでも配るというところが大事だと思います(笑)ちなみにこれインドネシアのゲームショーでやったことありますからね(笑)

ーずいぶん斬新なアイデアですね(笑) 2020年に向けて訪日外国人が増えていくと思いますが、今後「LOOK」はどのような未来を目指していくのでしょうか。

2020年までには年間5000万人の外国人が来るとも言われています。それまでに、東京オリンピック及びパラリンピックの公式アプリになって、5000万人のうち少なくとも1000万人以上の方々にLOOKを使っていただきたいと思っています。多くの人が訪れる東京で、混雑することなく購入できて、食事ができて、移動できて、オリンピックや観光を楽しめるようなアプリにまで進化させてたいと考えております。

また、その時には「LOOK」は小売業界にも激震をもたらすと思っています。

ー「LOOK」によって小売業界にもたらされる”激震”とは、具体的どのようなことでしょうか。

現在は商品の目立たないところにバーコードがありますが、いつか商品の一番目立つところにバーコードが配置されるようになります!

…と言うのは社内でも僕だけが言い張っていることなのですが、「LOOK」によって、外国人の”モノ”の買い方が大きく変わっていくと思っています。

現在だと、たとえば神薬十二が中国人の間でブームになっているように、人々は同じ国籍の同じ言語を話す人が勧めているものを買う傾向にあります。今後、そのような人々が、商品情報を理解することによって、日本人が良いと思って買い求めるものを同じように買えるようになる日が来ると信じています。

ー”日本の優れた商品”が売れるようになるきっかけが「LOOK」によって生まれていく、そんな姿を目指しているのですね。

そうですね。今後新たな拡張機能をつけ、より使いやすく便利にしていく予定です。だからこそ、オリンピックの公式認定アプリに、ぜひともしていただきたいですね。

高野氏が考える、インバウンド需要と小売業界の関係とは

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ーインバンド需要の伸びとその可能性に多くの小売企業が注目していますよね。

インバウンド需要が伸びているとはいえ、小売業界全体を考えれば売上の割合はまだまだ小さいのも事実です。小売業界はインバウンドだけを考えた行動に振り切ることはできないのです。

また鄭世彬(チェン スウビン)著「爆買いの正体」(飛鳥新社)という本の中で、

「日本人のみなさん考えてください。あなた達がフランスに行った時に、日本語だらけのフランス料理店に行きたいですか。本場の料理が食べたいと思いますよね?」といった記述があります。

私たち旅行者は、旅行者向けの体験ではなく、現地の人と同じリアルな体験を求めているのです。これは中国人の個人旅行の増加傾向にも見て取れるようにアジア人の間でも広がっています。

ー私も、自国ではできない実体験を求めに海外旅行に行きます。これから小売企業は、このような、現地人と同様の体験を求める観光客に対して、どういった対応をしていけばいいのでしょうか。

私は、店舗外観から内装まで、外国語をベタベタ貼った看板を出したり、POPを作ったり、通訳のできる従業員を雇ったりして、外国人旅行客を呼びこむのではなく、”日本らしさ”の伝わるコンテンツや商品づくりに注力していくべきだと思っています。

そもそも、外国語の話せる店員を雇う、各国言語表示を増やすといった行動は、出身国の多様化に耐えられないですからね。もういろいろ言語があって逆に見づらい。

ー改めて、今後「LOOK」が可能にする世界についてお聞かせください。

たとえば店員が見分けることのできない国籍の違いを「LOOK」のスキャン情報で知ることができます。中国人に一見見えても台湾、香港、シンガポール、華僑の人など国籍はぜんぜん違いますから。インバウンド対策として、台湾人、香港人、シンガポール人だけに商品やメニュー開発といったよりターゲットを絞ったマーケティングを行うこともできます。

今は、音声のテキスト化の開発にも力を入れているところです。

今後、スーパーやショップのタイムセールや、電車のアナウンスなどがアプリを通して自動翻訳されるようになれば、もっと便利になると思っています。

ー日本を訪れる観光客の出身国もまちまちですから、音声自動翻訳は今後色々な場所で求められていきそうです。

そうなんです。電車のアナウンスで8言語に対応なんてはっきり言って無理ですからね。

たとえば山手線で「次は新宿、新宿〜お出口は左側です〜」というアナウンスを英語で、中国語で、韓国語で、タイ語で、としていたら、8言語終わる前に新宿を通り越して代々木まで行ってしまいますもん。ぜんぜん間に合わない(笑)

ー今後は、音声の自動翻訳も含めサービスの裾野を広げていこうと考えているのですね。「LOOK」の可能性はどこまでも広がっていきそうですね。

最終的には、訪日観光客だけではなく日本にいる方が、「LOOK」を使って購買できるようにしたいと思っています。小売店側から言えば、「店舗の無人化」です。

今までは、店員が24時間常駐し、お客様が買う商品のバーコードをカゴから取り出しスキャンし、お客様からお金をもらい、在庫管理、需要予測をしていましたが、「店舗に行き、ほしい商品のバーコードをスキャンする。アプリで決済し、ポイントが貯まる。そして家に帰った後、その商品を使い切ったら「LOOK」で注文できて家まで届けてくれる。」といった風に、あらゆることを「LOOK」を使ってできるようにしたいと考えています。

ー本日はありがとうございました。

バーコードのスキャンを通して、訪日外国人のおもてなしをはじめ、新しい購買体験をもたらす可能性を秘める「LOOK」。

言語の壁を乗り越えることで、新たなビジネスチャンスも生まれそうだ。今後のサービス拡大に目が離せない。

▼チャプターエイト株式会社

http://www.chapter8.jp/

▼「LOOK」サービスサイト

http://look-goods.com/

 

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